本カンファレンスは盛会のうちに終了いたしました。ご来場いただいた皆様、ご講演いただいた皆様、開催にあたってご支援をいただいたスポンサーの皆様に厚く御礼申し上げます。

2019年の製薬業界の展望

製薬業界に訪れる最大のトレンドを予想

例年同様、2018年度も製薬業界にとって慌ただしい1年であった。劇的な変化があった年と言うほどではないにしても、水面下で動きのあった12か月と言えよう。(異論があればお聞かせいただきたい)。

編集部が見るところ、製薬企業は、過去数年にわたり業界に吹き荒れたビッグトレンドの一部を把握し始めているようである。患者さんからのインプットをこれまで以上に幅広く求め、リアルワールドエビデンス(RWE)を精査し、私達の生活を一変させているデジタルテクノロジーに取り組んでいる。他にもあるが、とりあえずこの3つを抑えておきたい。

では、2019年の製薬業界はどうなるのであろうか?編集部では、その答えを出すのに最も有効な方法は、製薬企業のエンジンとして働く人々の現場の声に耳を傾けることであると考えた。そこで、昨年eyeforpharmaの記事およびホワイトペーパーに寄稿していただいた執筆者の方々に対し、今年製薬業界に最も大きな影響を及ぼすと考える問題またはトレンドを1つだけ挙げるよう依頼した。

編集部の受信箱にメールが届くたびに、私達は様々な意見を覗き見ずにはいられなかった。予想通り、彼らの返答は幅広く面白い意見ばかりである。

いただいた意見を集計したところ、2019年に製薬企業が重視すべき重要な問題は、明確に5つに絞り込まれた。

eyeforpharma Japan 2019では、本記事で挙げられた5つの課題のほか、日本製薬業界に特化した課題やビジネス機会について、各分野でトップランナーとして活躍されている講演者の皆様に、自社の事例も含めお話いただきます。武田薬品工業社グラクソ・スミスクライン社より、コマーシャルエクセレンス、リアルワールドデータの最新事例についてお話いただくほか、ファイザー社メルクバイオファーマ社アストラゼネカ社MSDなどそのほか多くの製薬企業の皆様にご登壇いただきます。またSyneos Health社、PwC社、IQVIA社にもにも最新事例について講演いただきます。プログラムは随時更新されます。最新の情報はこちらからご覧ください。https://www.eyeforpharma.com/japan/jp/

トップトレンドNo. 1– 医薬品価格と医療費の低価格化

中心は米国であるが、世界各国でも幅広く、新薬の価格を巡る論争と無視できない感情が燎原の火のように広がっており、しばらくは消えそうにない。

「薬価を下げろというプレッシャーはますます強くなっていくだろう」MSD社ペイシェント・イノベーション担当欧州リードのPaul Robinson氏はそう予測する。「これからは、(特にがんや遺伝子治療などの分野で)新薬にはいくら画期的でもコストがかかりすぎるという風潮を受け、救急医療から社会介護へと資金が流れるだろう。長期的には利益を生むが、莫大な初期投資がかかる医薬品には、独創的な価格設定モデルが増えそうだ」。

変化は避けられないと同意するのは、Janssen社で前グローバル・コマーシャル&マーケット・アクセス・ストラテジー担当ヘッドを務めていたSteve Wooding氏である。「これまで、多くの巨大市場では比較的安定が見られていたが、それもシフトしつつある。異なる医療制度の中でも持続した価値をもたらすことができると実証するため、私達は適切な対策を練って対応しなければならない」

問題を是正しようとするなら、そうした対応を医療制度全体で引き受けなければならない。そう指摘するのは、全米医薬品評議会で議長兼CEOを務めるDan Leonard氏である。「米国のあらゆる医療分野で、私達が直面している課題のほぼすべての裏には、医療支出の問題がある。管理負担や低価値なケアから、過剰治療、古びた支払いメカニズムまで、医療制度には膨大な無駄がある。全米医学アカデミーの報告によれば、その額は年間7,500億ドルにも上るという」。

政治的プレッシャーはもちろん、患者さん中心主義から発生するプレッシャーがかなり大きいため、ペイヤーと販売チャネルはそれに合わせて適応しなければならない。そう指摘するのは、Boehringer Ingelheim社リアルワールドエビデンスCOE担当VP兼グローバルヘッドを務めるAnjan Chatterjee氏である。「米国でこれまで、CVS社などのグループにより買収されるPBM事業を目にしてきたが、今後はさらに加速するだろう。これにはいくつかの根拠があるが、第一はAmazonとその計画が脅威であること。第二に、医療体制の中間業者に甚大なコスト低減のプレッシャーがかかっていることが挙げられる」。

さらに、薬価が高いままでは、顧客がより金額に釣り合う価値を求めるようになる。「ペイヤーとHCP(医療従事者)の間には、より患者さんと疾患を網羅するソリューション(そして優先的に報酬が支払われること)を期待する声がますます高まっている。それには医薬品も含まれるが、それだけに留まらない」と説明するのは、Novo Nordisk社でコマーシャルイノベーション担当コーポレート・バイス・プレジデントを務めるAnders Dyhr Toft氏である。「デジタルヘルス・ソリューションと、患者さんサポートプログラムのさらなる向上が二本柱になるだろう」。

それに付け加え、彼はこう持論を述べた。数多くの新しい治療法がそれぞれの価値を示す一方で、「議論を『低価格化』あるいは『財政インパクト』あるいは『長期支払継続能力』の方向へシフトする必要がある。(治癒などの)生涯に渡り影響を及ぼす抜群の効果を誇る薬剤であっても、対価の求め方をクリエイティブに考え始める必要があるだろう」。

トップトレンドNo. 2 – 価値ベースの医療への移行

低価格化の議論ともつながるが、寄稿者の多くは、真の価値ベースの医療を実現するために必要な堅牢な医療制度の開発にとって、2019年は重要な年になると見ている。

UCB社で米国免疫治療ペイシェント・エクスペリエンス&バリューマーケティング担当ヘッドを務めるPeter Stueckemann氏は次のように語っている。「消費者が私達の医薬品やサポートサービスの価値を理解しやすくなるように、そして最終的には、人々が日常生活で願うことを実現するため、私達の医薬品がどれほど役に立っているかを大衆が理解しやすくなるように、製薬企業はどうすれば大衆の考え方や理解を前向きな方向へ導くことができるであろうか?2019年には、この課題に取り組むことが1つのポイントになる。平均的な消費者が理解できるくらいの、事実に基づいた明確な答えを用意できなければ、製薬業界はますます槍玉に挙げられ、良くない印象を残すことになるだろう」。

Stueckemann氏によれば、製薬企業は自社の医薬品がいかに患者さんを通常の生活に戻す上で役に立っているかについて、具体例をいくつも示すことで、悪い印象を好印象へと転換する必要があると言う。また、患者さんが手頃な価格で治療を受けられ、自分の病状管理への効果の大きさを深く理解する上で、製薬企業のサポートサービスがどれほど多大な影響を与え続けているかについても、具体例は豊富にある。要するに、「ほとんどの企業は価格だけを議論したがっているが、医薬品とプログラムに関して、2019年に製薬企業が好印象を取り戻すにはどうすればよいかということが、現在の問題を明確化している」。

それを実現するということは、「価値ベースの医療という1個のレンガや、1つのステークホルダーグループ、1つのブランド/テクノロジーに対処する孤立した独立型アプローチ」から脱却することを意味する。そう主張するのは、武田薬品工業株式会社で北欧諸国/バルト三国および欧州/カナダバリューベースパートナーシップ担当ヘッドを務めるSilvia Bäckström氏である。「これは持続可能ではない。私達は価値ベースの医療のあらゆる特徴を理解し、統合する必要がある」。

Bäckström氏によれば、2019年は「各種データソース(PRO、疾患/処方/母集団登録データ、請求データなど)をリンクさせ、AIによる予測、予防、患者エンパワーメント、患者さんのアウトカムと費用対効果の改善に情報が提供されるように、各種データソースへのアクセスを保証することで、アウトカムデータが持つ可能性をすべて解き放つ」年になると言う。

ZS Associates社主任のAaron Mitchell氏も、データと分析が価値ベースの医療の鍵を握ると信じている。「製薬企業はエビデンス状況の進化に直面している。治療の価値を実証する新しい臨床エンドポイントに対処するため、新しいデータソースと分析方法が必要になる」。専門委員会へと移行するプロバイダーの間で、ペイヤーはより価値の高いエビデンスと意思決定を強く求めているため、患者さんのデータはこれまで以上に貴重な資産になる。「監督機関がデータ規則を明確化すること、医薬品のライフサイクルの中でなるべく早くデータ収集とエビデンス作成に着手すること、そして製薬企業が既存のデータソースをもっとうまく活用し、新しい臨床エンドポイントの策定で指導的役割を果たすこと。これらが必要であるが、今のところは障害にしかなっていない」。

トップトレンドNo. 3 – AIの価値をフル活用

2018年は、人工知能があらゆる形でニュースになり、その使用、可能性、危険性を巡る議論が過熱した。2019年は、製薬企業がライフサイクルの中でどのようにAIを組み込むべきかに解答を出し、できる限りデータを有効活用する年になるだろう。

「ビッグデータ、マシンラーニング、AI用アプリケーションへの関心は高まっている」と語るのは、Sanofi社ペイシェントソリューション担当グローバルヘッドのAnne C. Beal氏である。「AI分野には注目が集まっているのは、研究開発からマーケティングまで、患者さんの要望、ペイシェントジャーニー、患者さんの行動をより深く理解するために幅広い用途が考えられるからである」。

しかしながら、「私達が将来的に疾病を迎え撃てるように、疾病に立ち向かっている患者さんと医療従事者の生活で違いを生み出すには、目まぐるしく変わる環境でAI学習を変換する能力が重要になる」。Janssen社で疾病のない世界のアクセラレーター担当グローバルヘッドを務めるBen Wiegand博士はそう付け加えた。

EHR、ゲノミクス、専門研究所、mHealth、eCOAなどの情報源から多種多様なデータが増加するにつれ、これまでに積み重ねてきた労苦が報われることになるだろう。Oracle社ライフサイエンス・ストラテジー担当グローバルVPのJim Streeter氏はそう指摘する。「製薬企業は、拡大の一途をたどるデータソースの集計、消去、管理を一元化するため、専用テクノロジーを臨床R&Dに活用し始めた。製薬企業では、従業員がデータを統合し、それを組織全体であらゆる職種(安全管理部、臨床医、データ管理者、データサイエンティスト、メディカルレビューアー、生物統計担当者など)と共有することにより、効率性が大幅にアップしているため、2019年には大きな飛躍が見られるように思う」。

臨床開発において、製薬企業と患者さんの双方に莫大な利益をもたらすだろう。そう予測するのは、IQVIA社VPのSarah Rickwood氏である。「データサイエンスとヒューマンサイエンスの融合は、臨床研究の複雑さと課題に対処し始めるようになる。これは、大手製薬企業が持続できる速度を超えてR&Dコストが上昇し続けるため、絶対に必要になるだろう。がん研究所が最近発表した報告書では、臨床試験における医薬品開発速度が鈍化しているため、がん治療薬を実際に患者さんに投与できるまでの期間が延びていると結論付けている」。

しかしながら、AIの影響はさらに拡大しそうである。「2019年は、デジタルソリューションとAIの飛躍の年となり、急速に拡張しているエビデンスの海で医療従事者を支え導くだろう。これこそ、2019年に私が肌で感じるトレンドになるはずだ」AstraZeneca Nordic-Baltic Marketing Companyでマーケットアクセス&プライシング担当VPを務めるMartin Strandberg-Larsen氏はそう述べた。

トップトレンドNo. 4 – 患者さんからのインプットが「通常業務」化

製薬企業の中で患者さん中心主義プロジェクトの勢いは確かなものであり、落ちる兆しも見えない。ほとんどの製薬企業では、患者さんを企業理念の中心に据えている。さらに近年は、医薬品ライフサイクル全体において、患者さんからのインプットがこれまで以上のボリュームで求められている。

とは言え、患者さんからのインプットが「通常業務」化するまでに多大な努力を払った企業はほとんどない。2019年は、ブレークスルーの年になるだろうか?

「最初から医療消費者を積極的に関与させるトレンドが来ている」そう指摘するのは、LEO Pharma社希少疾患担当最高患者責任者のCamilla Krogh Lauritzen氏である。「このアプローチは未発達で、現時点では多くの製薬企業において戦略も策定されていないが、2019年には互いに利益のある価値を示す初めての『確実な証拠』が見られるように思う。患者エンゲージメントにおけるROI(投資回収率)に関する論文は1本しかないが、2019年には数倍に増加するだろう」。

Roche社でグローバル・マーケティング・ストラテジー&サービス担当ディレクター兼グローバル・デジタル・マーケティング担当ヘッドを務めるJim Lefevere氏にとって、患者さんからのインプットを組み込む利点は明白であると言う。「迅速にリソースを拡大/縮小し、影響力の大きい患者エンゲージメントプログラムを策定し、新しいテクノロジーを活用して患者さんの母集団を絞り込むことができれば、リスク込みでも投資を回収できる。マーケティングの基礎を見失わず、パートナーとツールを整えて迅速に拡大/縮小するよう注力することが重要である。言い換えれば、『備えあれば憂いなし』である」。

Lefevere氏によれば、製薬企業が患者エンゲージメント戦略と支援戦術を策定する場合、データマネジメントに関する深い専門知識が必要になると言う。「米国および世界各地で明確なデータマネジメント・アプローチを整備することが重要である。現在、データのほとんどはサイロ化されているため、データサイロを統合し、洗い出してデータインテグリティを保証することが基本となる。結果には(とりわけEUでは)大きな意味があるが、ターゲット・マーケティング・プログラムの策定には長い期間がかかる」。

しかし、患者さんを巻き込むことは、長期にわたる選択の問題ではないかもしれない。「患者エンゲージメントへのシフトは、FDA(米国食品医薬品局)がその義務化に近づくため、今後も続くことになるだろう」MSD社のPaul Robinson氏はそう予測する。「各製薬企業は、このことを臨床開発用のSoP(標準業務手順書)に取り入れるだろう。患者さんは今後も積極的に関与することを求め、認識を深めていくことになるが、患者さんの団体の資金調達は難しくなり、公的資金の不足によるギャップを埋めることを製薬業界に期待するようになるであろう」。

トップトレンドNo. 5 – ランダム化比臨床試験の先へ

従来のランダム化比臨床試験では、規制当局とペイヤーの双方を十分に満足させるために必要なデータを生成できないことは、もはや定説になった。リアルワールドエビデンス(RWE)は、不足しているデータを埋めるツールとして徐々に認知度を高めている。

RWEに対する規制当局の態度は、急速に順応しつつある。「新薬の承認を支援するためのエビデンスを生成するにあたり、FDAがリアルワールドデータ(RWD)をどのように見て活用することになるか、私達は今その過程を目にしている」と語るのは、NPC社のDan Leonard氏である。「質の高いRWDおよびRWEは、患者さんの治療に有意義な情報を提供し、市場に投入された治療薬を改善する」。

IQVIA社のRickwood氏は、規制当局によるRWDの受け入れが2019年の重要な変化になることに同意しているが、RWDの効率性と患者さんの参加/体験を改善するため、「2019年には仮想臨床試験プロセスの採用が拡大しそうだ」とも付け加えた。

Rickwood氏は、市場において重要な価値を有する成長トレンドとして専門治療へ移行し、希少疾患分野におけるR&Dコストの管理に対するプレッシャーが益々高まると予測している。「総合臨床試験治療群により、従来の治療群を用意するのは実用的ではなかったり、倫理的に難しかったりする場合でも、臨床試験を行うことができる。また、コスト削減と開発期間短縮にもつながる」と彼女は主張する。

2019年には実際的臨床試験(PCT)の分野が成長するだろう。そう予測するのは、Syneos Health社でリアルワールド&レイトフェーズ担当SVPを務めるDavid Thompson氏である。「PCTは、治療の効果ではなく有用性を測定し、最も厳格なリアルワールド研究デザインを示す。これは、研究者が介入しない観察試験やデータベース分析とは対照的に、患者さんがランダムに治療薬に割り当てられるため、バイアスと交絡が少なくなるからである。PCTは、規制当局の目には間違いなく魅力的な試験に映るため、かなりの強みとなる。なぜなら、PCTにはリアルワールドエビデンスを用いた試験という品質証明があるばかりか、従来の臨床試験から主な設計要素を受け継いでいるからである」。

eyeforpharma Japan 2019では、本記事で挙げられた5つの課題のほか、日本製薬業界に特化した課題やビジネス機会について、各分野でトップランナーとして活躍されている講演者の皆様に、自社の事例も含めお話いただきます。武田薬品工業社グラクソ・スミスクライン社より、コマーシャルエクセレンス、リアルワールドデータの最新事例についてお話いただくほか、ファイザー社メルクバイオファーマ社アストラゼネカ社MSDなどそのほか多くの製薬企業の皆様にご登壇いただきます。またSyneos Health社、PwC社、IQVIA社にもにも最新事例について講演いただきます。プログラムは随時更新されます。最新の情報はこちらからご覧ください。https://www.eyeforpharma.com/japan/jp/